塚田孝『都市大坂と非人』(《日本史リブレット》040)2001、読んだ
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大坂周辺の非人の生活実態というか組織のあり方が分かる。具体的な人名や家系なども。やはり社会史はおもしろい。
非人の支配グループ(長吏・小頭)と支配下にある非人たち、特に垣外番たちとが必ずしも利害を一致させていないという話など。
江戸時代の大坂の各町には非人が番をする垣外番(かいとばん)の小屋があって、そこに非人が常駐した(自分は常駐せず、弟子をそこに常駐させている場合も多いらしい)。非人は町の家で祝儀があった時とかに勧進(物乞いみたいなもの)に来る。各家は垣外番の非人と契約することで、彼以外の非人が勧進に来るのを防ぐ(つまりこの家に勧進する権利を持つのは彼一人だけだと定める)。ところがその契約書にあたる「四ヶ所札」には垣外番の非人自身の名前などはなく、「四ヶ所」という大坂の非人の取りまとめ集団の印鑑しか捺されていない。非人の集団側(「四ヶ所」側)では、勧進する権利を垣外番に限定させることを名目的には認めていない(実質は認めている)。
町側の文書では、勧進する権利を垣外番一人に限定させるというようなことを明らかに書いているので、町側の理解と非人集団側の理解とが実は一致していない。
それでもある程度うまくまわっている。
また非人たちは大坂市中に自分の屋敷は持てないが、その周辺(指定された地域)には屋敷が持てた。その屋敷に付随して、垣外番(+勧進)の権利(株)を所有したらしい。非人というと物乞いのイメージで何も所有していないと思いがちだがそんなこともないということ。
江戸はまた色々異なる。