日本芸能実演家団体協議会が2022年に「芸術家の社会保障に
関する研究」をまとめていて参考になる。特に実演家に焦点をあてて、ドイツ・フランス・韓国と比較をしている。
韓国は2011年ころに芸術家福祉法という法律ができて、芸術家を認定し、社会保障を充実させる制度が整っているらしい。
https://geidankyo.or.jp/img/research/socialsecurity-reseach-report2022.pdf
アメリカについては同じく日本芸能実演家団体協議会が2024年に「アメリカ実演家の社会保障・互助制度の調査研究」を出していて、労働組合・非営利組織の充実が特徴として挙げられている。
https://geidankyo.or.jp/img/research/socialsecurity-reseach-report2024
日本の芸術家は「自営業」扱いされており、他の国と違って労働者として認められておらず、社会保障が十分でない点が問題化されているらしい。
国際的にはユネスコが1980年に出した「芸術家の地位に関する勧告」があって、いろいろ理想的なことを述べている
https://www.mext.go.jp/unesco/009/1387385.htm
個人的に気になるのは、「芸術家」を認定する制度が国にあるのかどうか、で、これはよくわからない。
日本は2021年から芸能関係作業従事者が労災保険の「特別加入制度」適用を認められている。特別加入団体に所属する必要があり、その類の団体として「全国芸能従事者労災保険センター」が2021年にできている。
https://artsworkers.jp/geinourousai/
要するに国自身で把握はしていないということになる。
その意味で例えば弁護士や医者とかと社会的地位が異なっている。
学者も学位という形で国家に依拠した認定制度を持っているので、それとも異なる。
一応、重要な作家などは戦前なら帝室技芸員、戦後は文化勲章とか日本芸術院会員とかになって、年金が出たりはする。が、一般の芸術家には関係ない
2022の研究での韓国の制度についての言及
「保険料は、芸術家福祉法に基づき、芸術家福祉財団が支援する。これは文化体育観光部の予算で、他の3ヶ国と比べると、相対的に積極的な国費投入が行われている。60~70年代に福祉国家化のピークを体験した日独仏とは異なり、韓国は現在国全体で福祉国家を推進する中にあり、芸術家もそのプロセスで様々な制度を享受するに至っている。」
福祉国家政策のタイミングの問題ということになるらしい。韓国は軍事独裁からの民主化が80年代後半になされているので、そこからの福祉政策の充実の流れのなかということになるのか。
そういう意味ではかなり政治の流れの影響が大きい。当然ではあるが。